診療圏調査が医院・クリニック開業の成功を決めるポイントです! 】


診療圏調査医院クリニック開業の成功を決めるポイントです!】





1, 診療圏調査とは


 診療圏調査を知っていますか?聞いたことはあるでしょうが、その中身や重要性を充分知っていますか?この調査は、開業の成功・不成功を左右するといっても過言ではありません。

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 診療所(医院、クリニック)を開業する場合、はたしてその場所(物件)で開業が成功する否かを分析する必要があります。その分析の基礎になるものが診療圏調査です。通常、商店の出店に際しては、マーケットリサーチ調査を実施して、どの地理的範囲まで訴求力が及ぶか(商圏)を想定し、商圏内の世帯数、年齢構成といった諸要素に購買率を掛けて売上見込みを算出し、経営計画の根拠とするといった手順を踏みますが、診療圏調査も考え方の基本はそれと同じです。

2, 診療圏調査の手順


 診療圏調査は、通常次のような手順にしたがって行われます。


【手順 1.立地概要調査】

 開業予定地周辺の地理的条件などを調べるため、全体を俯瞰できるように地図などを購入して地理的範囲を視覚化し、さらに人口の分布をその地図に落とし込みます。 また、できれば通勤や通学、買い物などの住民の生活動線を調査し、駅や停留所の位置、乗降者数、商店街などの人の流れを左右する要因も盛り込みます。 それによりひと目で全体的な地域特性をデータとして把握できるようにします。


【手順 2.診療圏の設定】

 開業予定地の周囲全体から自院の診療圏の設定を行います。

 診療圏とは、患者の来院が通常認められる地理的範囲をいいます。 この診療圏は、一般的には地域性を加味して、開業予定地を中心として、半径 500メートル/徒歩 約10分圏内を一次診療圏(来院確率が高い地域)、半径 1㎞/徒歩 20分圏内(またはバス・車利用)の距離を二次診療圏として設定します(原則)。 しかし、これは都市部に該当する考え方で、地方都市や農漁村地域(人口密度が低く、移動が主として車である地域)は、一次診療圏を 1km、二次診療圏を 3km程度に設定しても問題ないでしょう。 但し、診療圏内であっても大きな河川、鉄道、幹線道路等によって診療圏が分断されているといった地理的、社会的要因があります(診療圏の分断事由)。 その場合は、分断事由を加味して診療圏を限定して捉える必要があります。 また、提供する医療サービス、診療科目、各種サービスの内容により診療圏の範囲を加減して設定することも必要になってきます。 診療圏の設定は、距離的要因を基礎に考えますが、各種の要因(地形的環境、交通の便や道路事情などの社会環境)を踏まえて、来院のしやすさを基準に設定すべきです。また、その診療圏によっては一次診療圏のみで設定する場合もあります。


【手順 3.診療圏内人口調査】

 開業地予定地周辺の人口、世帯数、年齢別人口、夜間人口・昼間人口の比率、過去または将来の人口の変動傾向などを調査し、医療マーケットとししての基礎資料を整えます。 そして、来院患者数の検討のためには、診療圏内(一次・二次)の人口を年齢別に把握する必要がありますので、昼間と夜間、男女別、年齢階層別データもそろえます。 これら人口調査は、住民基本台帳など自治体の役所や図書館などで入手することができますが、今日では、インターネットからも入手できます。 ただ、資料の正確性、的確性を確保するには、専門のコンサルティング業者に依頼するのも懸命な方法です。

診療圏内人口調査

 ところで、診療圏内人口の将来予測も行う必要があります。 今後の人口が増加傾向なのか、減少傾向なのか、高齢化がどの程度進展していくのかといったことを見極め、診療圏内の人口や年齢別分布の予測を立てます。 特に高齢者を主たる患者とする診療科目を専門とする場合は、地域の高齢化の進行状況をしっかり見極めることが必要になります。 この予測をするためには、各地方自治体統計局データをもとに、その地域の人口の推移、年齢別分布状況、出生・死亡といった人口動向を参考にします。


【手順 4.診療圏内の推定患者数調査】

(1) 基礎作業

 患者数の推定は、入手した年齢階層(【手順 3】参照)、性別人口構成と受療率を乗ずることによって算出します。 ここで使う受療率とは、厚生労働省が行う患者調査に基づく人口 10万人当たりの診療所における 1日当たりの患者数を各診療科目に該当する疾病分類別に調査したデータです。 3年ごと発表され、統計書籍として市販されています。 実際にはこの元データを各診療科目別の年齢階層別受療率として算出するので、忙しい医師がこれらの集計加工作業をこなすのは効率的ではありません。 したがって、専門業者側が集計した受療率データを入手して活用するのが実際的でしょう。 例えば、内科であれば、疾病大分類データのうち、感染症および寄生虫症などの受療率といったように、疾病分類→診療科目分類へ変換した自院の診療科目の受療率(a)を出し、上記【手順 3】で示した診療圏内(一次と二次)の年齢階層別人口(b)を掛け合わせることで、診療圏内における 1日の該当診療科目の患者総数を算出するのです。


推定患者総数の算出式

該当診療科目の年齢階層別受療率(a)× 診療圏内年齢階層別人口(b)

= 該当診療科目の診療圏内推定患者総数


* 上記計算を一次診療圏と二次診療圏で別に行い、その結果を合計する。

  尚、一次診療圏の設定のみの場合は、一次診療圏のみの計算を出す。


(2) 競合施設の調査による診療圏内シェアの算出

 診療圏内の競合調査は、従来は電話帳や、大規模な書店で市販されているドクターズマップ、医籍総覧によってデータを入手していましたが、最近ではインターネットによるホームページや福祉・医療機構のWAM・NETなどの医療機関検索サイトの活用でかなりの情報を瞬時に簡単に入手できるようになっています。 それら公開データに医薬品卸業者、地域の調剤薬局などからその競合医院の評判や実際の来院患者数など、より深い定性的情報を加え、地域の患者がどの医療機関に通院しているのかを把握します。 これらの情報収集活動を医師本人が行うのは、かなりの手間と時間がかかるので、より詳しく行う場合は、調査業者に費用を支払って現地実態調査を委託する場合も少なくありません。 これらの競合医院をデータ一覧表にまとめて、医療機関ごとに院長の年齢や専門、後継者の有無、出身大学、診療科目、診療時間、休診日、既存患者数、地域の評判、スタッフの態度、建物の外観、駐車場の有無や台数、医療機器の整備状況、広告の露出度など経営の強み弱みを検討し評価します。


(3) 自院推定来院患者数の算出

 診療圏調査は、その立地で開業した場合、自院が獲得できるであろう 1日の推定来院患者数を算出します。 医療サービスの需要である診療圏内の推定患者総数を、医療サービスの供給側である競合調査結果に基づく各競合施設と自院の評価点数を加えたシェア率で除せば計算でき、それを一次診療圏、二次診療圏ごとに行い、合計することで自院の獲得できるであろう推定患者数を求めることが可能となります。


(4) 聞き取り調査

 聞き取り調査とは、その診療圏内の住民から主として競合の評判、医療ニーズ等をヒアリングすることを言います。 従来この調査は診療圏調査に必須ではありませんでしたが、是非実施すべきでしょう。

診療圏聞き取り調査

この調査によりその診療圏内の競合の実態が深くつかめますし、住民の医療ニーズが各種の面で把握できるからです。 やり方は、診療圏内で30人~100人 (標榜科目により変える)の住民に主として「 競合の内容・評価」、「各種の医療ニーズ」を聞き取るのです。 聞き取りの内容を工夫することにより開業後の自院のサービス展開に大きく寄与する場合がありますので、是非この調査は行ってください。


【 手順 5.総合評価 】

 最終的に求められた 1日の自院獲得推定患者数が、資金計画からみても必要な患者数に足りていれば、全体の計画は安全性が高いものと判断して大きな問題はありません。 しかし、残念ながら資金計画上必要と見込んだ患者数を調査結果が下回った場合をどう判断するかです。 単純にその立地が開業に不適切だと判断するのではなく、よく中身を吟味することも大切です。 何故かというと、診療圏調査の結果が悪い要因として、自院の推定患者数が少なかった場合、そもそも人口が少なく患者数が不足している地域なのか、あるいは、患者は十分にいるが競合が激しい地域なのかによって判断は大きく変わるからです。 人口が少ない場合、基本的に医療の需要が少ないのですから自院の医療マーケットとしては不適格です。 反面、競合が激しい場合は、競合の内容をよく吟味する必要があります。 例えば、各競合の院長先生の高齢化が進んでいる場合、将来的には競争が低下します。 その地域が近い将来人口増加し発展が予想される場合は医療需要が増加すると判断できるのです。 その判断も考慮に入れて、開業を検討する必要があるのです。

 難しい価値判断を要求されますが、現在のように開業ニーズが増加している状況では、自院経営の安全性を最重要視点において開業の判断をするのが妥当だと考えます。 つまり診療圏調査の結果、自院の推定患者数が少なく出た場合、その原因の如何にかかわらず基本的にはその候補地での開業を見送るのが適切な判断といえます。 そもそも開業候補地が限定され選択の余地が無い場合は別ですが、開業候補地を広く選定できる場合は、開業の立ち上がりの無難さを第一において開業を進めるのが賢い判断といえるからです。 それでなくても開業の立ち上がりは種々の問題が起こってきます。 経営者である院長として診療以外にそれらの種々の問題処理に時間を割かれるのです。 自院に患者さんが順調に来院していればその問題処理もストレスが少ないといえます。 しかし、患者さんの来院が少ないと自院経営が苦しいですから、そのストレスはかなりなものです。 そのストレスは避けるべきです。 したがって、推定来院患者数が自院の事業計画上少ない場合は、無理を避け、その候補地では開業を見送るべきです。

診療圏調査

 このように診療圏調査に基づく開業地選定の判断は、各種の知識や経験が必須です。 そして高度な価値判断も要求されます。 したがって、その判断を的確に進めるためには経験の多い専門家 ( 開業コンサルタント、薬卸業者等 ) の助言を得て進めるべきだと考えます。 くれぐれも診療圏調査を安易に考えないでください。
診療圏調査は、開業する先生の成功・不成功を左右する要なのです。






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