開業形態の基礎知識 ④ 【 医院、クリニックの承継開業 “基礎知識” 】


医院クリニック承継開業





 承継開業(継承開業)とは、医院・クリニック(診療所)を前院長から譲り受けてその診療所の経営を引き続き行う開業の形態を言います。最大のメリットは、患者さんをそのまま引き継ぐ事ができる点です。(ただ、患者さん全員を全て引き継げる保証はありません。)初年度からおおよその診療報酬の予測がつき、場合により医院を承継してすぐに黒字になる事もあります。医療機器などもそのまま使え、初期投資が少なくてすむのもメリットです。

このように書くと、「承継開業」には欠点はないように聞こえますが、次のような欠点もあります。まず、立地を選べません。そして、引き継いだ診療所が開業後数十年経過していて、内装などがかなり古くなっている場合が多いのです。また、譲り受けた医療機器も性能的に現在の製品と比べて劣っています。そのためそのままでは先生自身が望むような医療サービスを患者さんに提供できない事もあります。

「承継開業」を目指すにしても、条件の良い案件がいつ・どこの地区に現われるかは不確定です。
承継案件(承継物件)だけに絞って待っていた結果、いつまで経っても開業できなかったという事が無いようにしなくてはなりません。おおよその開業時期を明確にしたうえで承継案件が現れるのを待つべきです。そして、ある時期まで来ても承継案件が出てこない場合には、新規で開業する、といった具合に両面の開業形態を考えつつ、準備をするべきなのです。

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開業形態の基礎知識 ③ 【 医療ビル、医療モールでの開業の長所と短所 】

 

 

医療ビル医療モールでの開業の長所と短所 】
 

 今日、医療ビルや医療モールでの開業が人気です。
医院・クリニックの新規開業の1,2割を占めているといわれています。
たしかに、医療ビルや医療モールでの新規開業は人気ですが、当然その開業については、
メリットとデメリットがあります。

 

【 メリット 】

1、複数の診療所が集まることによる集患面での相乗効果が得られる。
2、他入居医院との診診連携が取りやすいため、専門性特化がしやすい。
3、診療科目ニーズのある地域であれば、駅から遠くても集患が見込める。
4、単独開業に比べて自院の認知の浸透が早いため、比較的集患が楽。
5、調剤薬局が併設されていることが多い。
(近年は薬剤の在庫管理にかかるコストを削減するため、院外処方が主流となっている)
6、敷地内に駐車場が完備されていることが多く、患者の利便性が高い。

 

【 デメリット 】

1、医療機関と物販店、飲食店(酒を提供する飲食店)など他業種混在の場合、クリーンなイメージを損なう場合があり、患者がマイナスのイメージを持つ可能性がある。
2、開業医間の関係がうまくいかなかった場合(共有部分の費用按分など)、対処に困難が伴う。
3、他入居医院の悪い評判の影響を受ける場合がある(受付、待合室など共有している場合など)。
4、テナントがすべて埋まらず1ヵ所でも空いていると、それだけでも患者がマイナスのイメージを持つ場合がある。
5、開業準備の際、内装業者など各種業者が指定されている場合がある。
6、初期・運営コストが比較的高い場合がある。

 

(1) 内装や備品が全て揃っていて開業するケースの際に、自身で準備するよりもコストが高くなる場合がある。
(2) 一般のビルテナントよりも家賃が高いケースもある。

このように、医療ビルや医療モールでの開業にはメリット・デメリットがあるので、一概にいい悪いの判断はつけられません。したがって個々のケースを慎重に見極める必要があります。 そして、その際のポイントは次の点です。

 

 ① ビルの運営管理者が、その医療ビル・医療モールの運営に正しい理念や、強い意欲をもっているかどうか。
② その医療ビル医療モールの診療圏が、適正か。(換言すれば診療圏調査が的確になされているかどうか。)

この2点が満たされているかどうかが、その医療ビル、医療モールの成功の条件になってきます。

 

asakairyoubiru_1.JPG         医療ビル 医療モール 医院開業場所研究会 メディカルセンター

 

*上記に関するご質問は、下記連絡先までお問合せ下さい。

「 開業場所研究会 」 運営会社
テナントアシスト・ウイン株式会社
Email:fukui@tenant-aw.jp

 

開業形態の基礎知識 ② 【 医院開業の新しいスタイル、集合施設型開業(医療ビル・医療モール等)について 】

 

 

医院開業の新しいスタイル、集合施設型開業( 医療ビル医療モール について 】
 

はじめに

 今後、医院・クリニック(診療所)は、厳しい評価選択の時代を迎えます。しかし、的確且つ良質な医療サービスを提供できれば、住民の評価・支持は得られます。的確且つ良質な医療サービスは、他施設との連携・協力がなければ十分なものといえなくなります。この記事は、他の医療機関との連携・協力を組み込んだ形の診療所開業(集合施設型開業)をご案内するものです。

集合施設型開業 とは・・・

連携協力
集合施設型開業とは、複数の診療科目の診療所(医院・クリニック)が一つの建物や土地に集まって診療を行う形態です。例えば内科と整形外科の連携は、密接な関係にあります。また、内科と皮膚科との連携も重要です。医療機関の相互の連携協力は患者さんにとり心強い味方になります。これは一方では診療所側にとり、経営上大きなメリットを与えてくれます。そのような色々のメリットを生かす開業形態が、集合施設型開業です。以下、その 各種メリット を説明します。

 


1.集患メリット

 ・ 患者さんのニーズが高い科目のため患者さんが集まります。相互連携 

 ・ 患者さんにとり利便性が高いので患者さんが集まります。

 ・ 集合施設ゆえ認知度が高く集患率が高まります。

 ・ 集患コストが安くなります。

 


2.人的メリット
  •    ・ 人的交流が図れます。
  •    ・ 人の遣り繰りができます
  •    ・ 人事管理が効率的になります。

3.施設上のメリット
  •    ・ 各種施設を共有できる。( 待合室、駐車場等 )
  •    ・ 無駄のない施設を作れる。
  •    ・ 合理的な施設運用ができる。

4.経費上のメリット
  •    ・ 施設の共有化によりコスト削減が図れます。
  •    ・ 機器類の共有化によりコスト削減が図れます。
  •    ・ 広告宣伝が低コスト化で起案する。

5.薬剤処方メリット

相互連携  無理のない薬剤処方が図れます。

 ・ 投薬ミスが防止できます。

 ・ 投薬管理が合理化・効率化されます。

 


最後に

 集合施設型の開業は、メリットが多いです。今後の厳しい開業環境においては、十分検討に値する開業形式だと考えます。

 

*上記に関するご質問は、下記連絡先までお問合せ下さい。

「 開業場所研究会 」 運営会社
テナントアシスト・ウイン株式会社
Email:fukui@tenant-aw.jp

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開業形態の基礎知識 ① 【 各種の医院・クリニック開業形態 】


【 各種の医院クリニック開業形態 】





はじめに

 今日、開業の形態はそれほど固定的なものではありません。 意外に自由な形態を取ることが出来ます。
ただ、その場合「医療機関の役割はどのようなものがあるか」という点をしっかり検証し、それを基に開業の基本方針と事業計画の検討をする必要があります。

各種の開業形態 参照図


Ⅰ.ビルテナント開業 (参照図:Aタイプ)

 東京23区内の開業の約9割がこのビルテナント開業です。
このビルテナント開業は、開業費が比較的低額ですみ、開業準備期間も短くすみます。 そのため多くの先生が
利用する形態です。 この例として、当社が15年ほど前に開業支援したクリニックをご紹介します。

 Tクリニックは、京王線沿線の駅から徒歩約4分のビルの1階にあります。 現在面積が100坪以上ありますが、
開業当初は近くのビルの1階 約27坪で始めました。 内科、消化器科、小児科の標榜で始め、半年間は集患に
苦労しました。 しかし、1年後からは本当に患者さんが集まり、3年目で1日平均100人以上来院しました。
その後8坪ほど院内を広げることができましたが、来院患者数が多く (多い時は1日200人を超えます)、
どうしようもなく狭いので現在のビルに移転しました。

 Tクリニックは、大成功したクリニックです。 院長先生が地域医療に熱意を持ち、たゆまぬ努力をしてきた結果です。 このクリニックは、ビルテナント開業の一つのモデルクリニックだと思います。


Ⅱ.戸建開業 (参照図:Aタイプ)

 東京都下や千葉、埼玉、そして地方での開業の大半はこの戸建開業です。 この形態は、一戸の建物を建て、
その全部または一部を診療所 ( 医院・クリニック。以下同じ ) にします。

 戸建開業は、開業資金の心配をしなくてよいのなら、ベストな開業形態でしょう。 なぜなら、診療所の面積を自由に取ることができ( 土地が広ければ )、建物の形を自由に造る事ができるからです。 しかし、お金の制約がある以上、
戸建開業は資金に応じた大きさ、内容のものしかできません。 ただ、それでもビルテナント開業よりは自由にクリニックを造る事ができます。

 山梨県山梨市で3年前に開業したSクリニック ( 内科、循環器科、アレルギー科 ) は、 土地約100坪、建物約60坪です。 土地の値段が安い地域では、良い土地を選択して、先生の考えるクリニックを造る事ができるのです。


Ⅲ.医療ビル開業 (参照図:Bタイプ)

 最近少しずつ増えてきている開業形態です。 複数の診療所 ( 競合しない医院・クリニック ) がひとつのビルに入る医療ビルもしくは、複数の診療所がひとつのフロアに入る医療モールは、それぞれ連携を取りながら診療するので、
患者さんに便利だとの発想で出てきた開業形態です。 また、変形版としてメディカルビレッジという形態 があります。 これは、一戸建ての診療所が複数集まった形です。 確かに、これらの開業形態は開業する先生にメリットが多く、
患者さんにとっても都合が良い面が多いので、今後増えていく開業形態だと思われます。
医療ビル開業・メディカルビッレジ開業は、集合した診療所が各種の面で連携すれば、非常に高い集患をもたらします。 また、増患もかなり期待できる開業形態です。

 当社で開業支援をした横浜市緑区のNクリニックは、4科目 ( 整形外科、内科、耳鼻咽喉科、眼科 ) が入っている医療ビルで開業を成功させました。 医療ビル開業はお勧めの開業形態ですが、注意するのはその集合する医院、クリニックの内容です。 標榜科目や規模に問題はないか、また医療ビルの全体管理に問題はないか等、検討すべき課題はいくつかあります。 それらの点を注意すれば、非常にメリットの有る開業形態です。


Ⅳ.医業継承 (参照図:Aタイプ)

 以前別な院長先生がその診療所を開業していましたが、事情によりその後を引き継いで( 承継 )開業する形態です。 この形態は経営上安定的ですが、その反面色々な制約もあります。 この開業は、開業費用が安く済むので、
もっと利用されても良い開業形態です。 ただ、承継の情報が広く出回らないので、中々この形態の利用が進みません。

 当社は茨城県稲敷郡にあるAクリニック ( 当初はK医院と呼称 ) をこの形態で開業支援をしました。 院長先生が急逝し、その後を継いで現理事長が承継しました。 当初は一つの医院でしたが、今では法人化して分院を三つ有するに至り、成功を収めています。


Ⅴ.在宅医療専門クリニック (参照図:Cタイプ)

 格別の診療施設を持たず事務処理スペースのみを備えた医療施設で、もっぱら在宅医療を行う形態です。 設備や
スペースが必要ないため開業費用がかなり低額になります。
機動力と強い熱意があれば、面白い展開が出来ます。


Ⅵ.センター的クリニック (参照図:Dタイプ)

 いわゆる画像センターなどの専門特化型の医療機関をいいます。 機能的には、他の医療機関の検査 ( 画像診断、高機能検査 ) の請負的な役割を果たし、特化した機能に集中するクリニックです。 往々初期投資はかかりますが、
高機能を備え、営業力があれば面白い開業形態です。





*上記に関するご質問は、下記連絡先までお問合せ下さい。

テナントアシスト・ウイン株式会社
Email:fukui@tenant-aw.jp